自殺者が多いことで知られる青木ケ原樹海(山梨県富士河口湖町)に設置された看板が、大きな反響を呼んでいる。多重債務者の救済運動を展開する「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」(被連協、事務局・東京)が「借金の解決は必ず出来ます!」と呼びかける看板で、設置以降、被連協には、多重債務者からの相談電話が殺到している。 (白井康彦)
この看板は、樹海の入り口に一月と三月に計八基が設置され、新設した相談電話(03・3255・2400)に連絡するように呼びかけてきた。
しかし、申請手続きに不備があったとして、山梨県からの求めでいったん撤去。先月下旬には正式な許可を得た二基があらためて設置された。
これまでに、樹海から携帯電話で相談してきた自殺志願者二十人以上の命を助けたほか、被連協の活動をマスコミ報道で知った多重債務者らから約千五百件の相談が寄せられた。
被連協では「多重債務は弁護士会や司法書士会、多重債務者支援の市民団体に相談すれば解決できるケースがほとんどだが、それを知らないまま自殺を考える人がいかに多いかを、あらためて感じた」と話す。
中部地方に暮らす六十代の男性Aさんと妻も先月、被連協の力で命を救われた。
住み込みの勤め先を辞めさせられ、ホテルや車中に泊まりながら、職探しをしていたがうまくいかなかった。履歴書に現住所を書けなかったのが悪い印象を与えたようだ。所持金も乏しくなり、疲れ果てて、死を考えた。「樹海で死ねば身元も分からないからいいと思って、何日も樹海の周りを車で走っていたんです」
被連協の看板は撤去されていた時期だったが、「命は親から頂いた大切なもの」という書き出しの看板を目にした。「防犯団体連絡協議会」などの団体名と相談先の電話番号が記載されており、電話してみた。
「とにかくいっぺん来てください。それからでも死ねるんです」
応対した地元警察署員の口調は熱かった。
警察署を訪問した夫婦は、まず政府の自殺対策のパンフレットを渡され、居住地の県の担当部署に電話してみたが、たらい回しのような対応で失望したという。
それを署員に話すと、勧められたのが、被連協への相談。夫婦の悩みは借金よりも「当座の生活費と仕事」だったが、署員は「ここなら何とかしてくれる」と後押しした。
電話をしたAさんは、女性相談員の言葉に迫力を感じたという。「100%助けます。早まらないでください」
この後、被連協事務局長の本多良男さんが詳しく状況を聞いた。そして、本多さんから連絡を受けて地元の司法書士が夫婦の支援に動いた。
夫婦は司法書士に同行してもらい、五月初めまで住んでいた市の市役所を訪問。市役所職員の紹介で民間アパートに住めるようになり、生活保護の受給のめどもついた。Aさんは「司法書士の先生などには本当に感謝しています」と語る。
看板の効果を確認できたとして、被連協は城ケ崎海岸(静岡県伊東市)や東尋坊(福井県坂井市)にも看板を設置しようと、地元自治体などとの調整を始めた。
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政府は今年四月に多重債務問題改善プログラム、六月に自殺総合対策大綱を発表。自殺者が九年連続で三万人を超える非常事態の中、多重債務問題が大きな原因の一つとみて、本格対策に乗り出している。日本弁護士連合会の多重債務対策本部の本部長代行を務める宇都宮健児弁護士は「政府方針に沿って自治体が、借金苦自殺防止の呼びかけや、それに関する相談体制の強化を進めてほしい」と強調している。
引用:中日新聞